燃料は流れているのに、足りていないという話
整備技術
前回の続き

燃料は流れているのに、足りていないという話

前回、燃料の流れについてあれこれ考え、ベンチテストではひとまず安定した状態にはなりました。
しかーし、正直に書くと──結果としては再発です。。。
オーナー様が再び同じ道をトレースしたところ、また同じ症状が顔を出し、再度整備に戻ってきました (◎_◎;)

DE、こういう時に大事なのは「外れた推論をなかったことにしない」ことだと思っています。現場では仮説が外れること自体は珍しくありません。問題はその外れ方をどう扱うかによりますです。

症状は相変わらずはっきりしています。
一定速で流しているあいだは問題が出ない。
ところが、街中でのストップ&ゴーが続き、長めの信号待ちを挟むと、エンジンがぐずり、やがて止まる。そして再始動が難しくなる。
時間を置くと回復するが、同じ条件でまた繰り返す。

ここで改めて考えたのが、燃料ホース径のことでした。明らかに燃料の供給量が不足しているということなんです。
たしかに4気筒大排気量車に内径6mmホースはどう考えても細い...ハズ
ホース径を大きくすればアクセルをガバッとやってもガソリンが足りなくなることはないだろうという理屈です。

DE、径8mmホースに交換しました。

重力落下式供給の燃料であれば、最終的にキャブレターに入る量はフロートバルブで制御されます。ホースはあくまで「通路」であって流量の最終決定をしません。その通路が細ければキャブの中が空っぽになってしまうと考えての交換ですね。

ところが、
今回ホース径を変えたことで症状が反対方向に明確に変化したんですわ。

■内径6mmのときは、街中走行で徐々に調子を崩し、再始動困難になる。
■内径8mmに変更すると、今度は一転して燃料が濃い方向の症状が出始める。
※アイドリングが爆上がりで不安定になり、回転が上がったかと思えば、時間差で落ち、最終的にエンスト。パイロットスクリューを絞り込んでも、アイドリングを調整しても制御できない。

この時点で、注目は自然とキャブレター本体側へ移ります。
ホース径の違いで特性が反転するということは、燃料を受け取るキャブ側がその変化に耐えられていない、ということでもありますよね。
(キャブがベストセットならば燃料供給量が増えたらキチンとした性能発揮をするということ)

そこで立てた仮説が、フロート室の油面高です。

VMキャブレターは、この油面の影響を非常に受けやすい構造をしていると言われます。
油面がわずかに高いだけで、パイロット域からスロットル初期にかけての混合気が大きく変わる特性があります。

今回の挙動を見る限り、、、
実際にはかなり油面が高い状態になっている可能性が大と考えました。

細いホースのときは、供給が追いつかないことで結果的に帳尻が合っていた。
そこへ本来あるべき量の燃料が、正しいレスポンスで流れ込んだことで、今度はキャブレター内部のバランスが一気に破綻した。
こう考えました。

つまり、
■細いホース → ガス足りないで破綻寸前
■太いホース → ガス足りるが破綻

という、なんとも皮肉な状態です。

さらに言えば、油面そのものだけでなくフロートバルブが十分に仕事をしていない可能性も大なのかと。
■経年による摩耗によるシートとの密閉度、動きの渋さ、など
これらが重なると、いろいろ悪さをするイメージが湧き沸きしてきます。


ここで、もうひとつ触れておいた方がいい話があります。
外部燃料フィルターについてです。

本来であれば、燃料コックユニットにはストレーナ(簡易フィルター)が付いています。しかし今回はそれが経年劣化で溶け落ちた状態です。
となると、タンクとキャブレターの間に外部フィルターを挟むことは必須になりますよね。
ただ、この外部フィルターという部品、中が見えるタイプであればあるほど、オーナー様の不安感を刺激します。。。(;^_^A

8mmホースに変更したあとでも、フィルターの中を覗くと燃料はチョロチョロと流れているだけ。内部がガソリンで満たされることはなく、「これ、本当に足りているの?」という疑問が頭をよぎります。

しかし、この状態自体は必ずしも異常ではないと考えました。
燃料は、キャブレター側で消費された分だけ補充されます。
下流の流量が増えれば、フィルター内部に燃料が“溜まる時間”は短くなり、結果として「常に薄く流れ続けている」ように見えるという寸法です。

フィルター内が満たされていない=供給不足とは、必ずしも一致しないワケです。見た目としては心許ないのですけどね (◎_◎;)

重要なのは、
■急なアクセル操作の直後
■アイドリングから開け始めた瞬間

上のタイミングで、フィルター下流側の供給が遅れずに追従しているかどうか。
いわば、溜まり具合ではなく応答性です。そして応答して減量した分が、この時ばかりはという勢いでゴボッとタンクから補填されてくるか。

今回のレイアウトではフィルターには常に傾斜を持たせ、空気がフィルター内から抜けにくくならない向きを選んで配置しました。
見た目だけを切り取ると不安になりますよね。ですが、理屈としてはむしろ自然な振る舞いとも言えると考えることにします。

だからこそ、
ここまで来て残っている違和感はフィルターそのものよりも、キャブレター内部で燃料をどう受け止めているかという点に集約されてきてるワケです。
ここまで来ると、次のフェーズははっきりしてきたかな?
燃料をどう流すかではなく、キャブレター内部で燃料をどう受け止めさせるか。


これには実油面の確認と調整がカギとなるでしょう。それにはフロートとフロートバルブの状態確認が必須です。
理屈としてはシンプル。。。
ですが、問題はこのキャブレター内部にどうやって辿り着くかなんです。

正直に言うと、
この車両の整備性はメチャクチャ良くありませぬ。
体感的にも、実作業データを見ても、「整備困難車種ランキングがあったら上位に来る!」そんな部類でゴザイマス。

車体からのキャブレター摘出が出来ないんですよ。エアクリボックスを破壊しない限り。。。
壊さないでやるにはキャブをズラす!それでも経年で硬化した樹脂部品(エアダクト、インシュレーター)、そして極端に少ないクリアランス(スキマ)との戦いになります。
理屈では「外して調整すればいい」と分かっていても物理的に駄目なんす。部品を壊したら代替品がないんすもん...

泣きそうです😢
でも、ここを避けて通ると、なーんなも解決しませんから ('◇')ゞ

というわけで、
次はキャブレターを独立させ、鉛直方向に持ち上げ、フロート室にネジ回しが入るスキマを作り出し、肝心要の実油面を確認、調整する作業に入る予定です。

純正のフロートバルブは新品を確保できました。いや~旧車では奇跡に近い⤴
やっぱり作業性は悪いんですけどね。まあ、基準を曖昧にするよりはその方が良いでしょう。

今はちょうど、
仮説は固まり、対策案も決まり、あとは実行!というステイタス。

続きは、無事にキャブレターが外せたかどうか、調整の結果はどうなったか、
また報告します ('◇')ゞ
これは他車種のVMキャブレター。
本編のは超デリケートなVMキャブレター


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