整備技術
よく考えたらおかしくないですか?
(バルブ)タペットクリアランス理論の謎
タペットクリアランスってご存知でしょうか?
バルブクリアランスとも言います。
4ストロークエンジンには吸気バルブと排気バルブがありまして、カムシャフトのカム山がこれらのバルブの茎を押すことで開閉させます。バルブが開くと吸気バルブからは混合気(生ガス)が流れ込み、排気バルブからは燃焼ガスを押し出します。
両方のバルブが閉じると全てのガスの出入りが途絶されますから圧縮行程に入ります。
カムシャフトは回転していまして、カム山はピストン2往復につき1回転する構造です。
DE、カムの表面にバルブの茎(ステム)がビタッと密着してスライドしながらカム山をなぞっていくのが理想です。スキマがない方が、ガタは出ないし、カム山の高さを目一杯使えて設計通りの出力が出せるから、というのが理由です。
しかし、常に圧着していますと摩擦が発生してパワーロスになりますし、部品の摩耗度合いが増してしまいます。そのこと以上に、考慮に入れないといけないとされているのが「熱膨張」です。
エンジンはシリンダーの中で継続的に燃料が燃えていますので高熱を発しています。高熱は金属を膨張させます。
カム及び、カムに密着しているバルブの茎が共に膨張してバルブを勝手に押してしまって、バルブが密閉しなくなってしまうことが問題になるとされています。
ここで注釈を入れますが、DEさんは妙な書き方していますよね?
いけないと「されている」とか、問題になると「されています」、とか。
この金属の熱膨張を予め考慮してスキマを開けておくのが“タペットクリアランス”です。ここまでは良いと思います。
例えば、鉄道のレールも25mごとに1cmくらいのスキマを設けています。これは、鉄の熱膨張率が0.000012でレールの温度が20度から50度へ上昇したとすると、0.000012×250000×30=約9mm膨張する事となることからです。スキマがゼロだとレールが干渉によって歪んで脱線等の危険があります。
話を戻しますが、カムとバルブステムのスキマが高温時にほぼゼロになることが理想です。
ここで疑問がわいてきます。
なぜ最近のエンジンはタペットクリアランスが0.05~0.08mmくらいに設定されているのでしょうか?。これは紙一枚も入らない狭いスキマです。(ちなみに昔のエンジンやディーゼルエンジンではクリアランスが0.15~0.2mmくらいでした。)この狭いクリアランスでは少し温度が上がればスキマがすぐにゼロ~マイナス(※バルブを押した状態)になってしまうのではないでしょうか?
その答えは材料にありそうです。
最近のガソリンエンジンのシリンダーやシリンダーヘッドはアルミ合金製です。一方、カムシャフトやバルブの材料は合金鋳鉄や合金鋼です。鉄よりアルミの方が2倍膨張率が大きいのは良く知られたところですね。
つまり、バルブやカムシャフトが組付けられているシリンダーヘッドの方が、バルブ&カムシャフトより遥かに大きく熱膨張するのです。
それが何か?と言われますと、、、
シリンダーヘッド自体が大きく盛り上がって、カムシャフトが取り付けられるホルダー自身も膨らむことになります。一方でカムシャフトやバルブはそれほど大きく膨らみません。つまり、アルミエンジンですと高温時にタペットクリアランスは大きくなり、スキマが広がる方向へ進むと考えられるのですね。
それ故に冷間時の調整ではできるだけスキマを詰めた値が設定されているものだと思われます。昔のエンジンはシリンダーヘッドも鋳鉄製であった為に、膨張した時のことを考えてスキマを大きく取っていたワケで、今いろいろ記事で見かけるのはこれをベースとした理論が紹介されているものではないかと。
アルミ製エンジンの整備書を読み解くと、設定値からアルミ製エンジンでは鋳鉄製エンジンとタペットクリアランス理論が逆になっていると考えられる、という結論に達するワケでゴザイマス。
如何でしょうか?