整備技術
前回、ボルトがネジ切れる話をしました。
金属疲労というワードをすぐにイメージできる方は流石でございます。
金属疲労によって破断し千切れる現象が生じるワケですが、そもそも『金属疲労』って?という話に行きつくところでゴザイマス。
金属の薄板を折り曲げると、折り曲げたところが弱く柔らかくなって、それを更にクチャクチャ動かすとポロっと破断したりします。これを「金属が疲労したから」と普通は考えますよね。
実はその反対なんだそうです。
金属疲労の大元は、『金属硬化』という現象です。金属を折り曲げるとその部位に力を加えることになって、金属を構成する原子の密集(転移と言います)が起きます。
転位が多くなると密度が高くなって原子が絡み合って動けなくなり、硬くなるのが金属硬化という現象です。
硬くて力の逃げ場がない分、“硬いものは折れやすい”という良くある理屈で金属疲労の末に破断するのですね。
そして、この『折れやすさ』を示す用語が “強度” というものです。
一方で “剛性” とは、力を掛けて変形する度合いを示す用語となります。曲げようとしてチカラを入れても曲がらない金属は、強度が高いのではなく “剛性” が高いということになります。
ところDE、曲げた金属の強度を上げる方法があります。
それは、『焼きなまし』と呼ばれる、ある程度に高温加熱して絡み合った原子(転位)を消滅させる方法です。金属の原子は再び元の配列に戻って、冷えた後は剛性そのままに強度が上がるという寸法です。
つまり、曲げた金属をバーナーで炙って自然に冷やせば強度を戻します。やけど要注意ですが。。。 、ということでゴザイマス。
ただ、炎で炙ることは酸化を促進することでもありますので、金属にサビ(腐食)が出るコトでもあります。それを防ぐために酸素を抜いた部屋の中で加熱する“真空熱処理炉”という装置もあります。
また、溶接も理屈はほぼ同じです。
その中でも酸素他と結合しないガス(アルゴンとか窒素など)を吹いてバリアを作り、酸素を遮断しながら溶接する手法に MIG溶接 とか TIG溶接 があります。
その中でも超高難易度が薄板金属の溶接で、TIG溶接が適しています。
排気管の見事な溶接ビードを見ればTIG溶接の凄さと美しさに恍惚としてしまいます。
この溶接を美しいレベルに出来るようになるには20年以上の修行が必要、とされているスゴ技なのですね、実は。
金属機械フェチの今日の一言・・・『マフラーの溶接痕を良く見てみましょう』

この画像より遥かに上手な溶接ビードを過去に何度も目撃していました。。。

蛇足です。
例のボルトですが、このネジ山は弾性域(伸びたら元に戻る)を超えて塑性域(伸びて戻らない)に達して強度と剛性が低下したものです。ちなみに、金属を曲げることを塑性域加工といいます。