整備書の締付トルクを守らないといけない理由
整備技術
締付トルクとボルト強度区分

整備書の締付トルクを守らないといけない理由

ボルトの話です。
いつも不思議に思っていました。
オートバイ整備の際に我々が知りたいのはただ一点、『このボルトをどのくらいの力(トルク)で締めつけたら壊れるのか?限界はどの辺?』ということだと思います。

ところが、
締付トルクは「N・m」で表されます。一方でボルトの強度区分は「N/mm²」で示されます。
一見似てるけど違うんです。まず “・” は掛け算、 “ / ” は割り算を示しますので。

ボルトの強度区分では〇.〇と表記されます。“.”の左側の数値は引っ張り強さを示していて、右側の数値は降伏点を示しています。
良くある市販ボルトで『4.8』と刻まれたものがあります。
これは400N/㎜²の引張強さがあり、その80%の320N/mm²以上の荷重がかかると伸びてしまい元には戻らないということを意味しています。

『降伏点』とはそのボルトが弾性を無くして伸びきってしまう境目のことです。
ですが、降伏点がそのボルトの最高強度の80%と書かれても、実際に何N・mの締付トルクを掛けて良いかが分からないことが問題です。
なぜならボルト強度は垂直に引っ張ったときの荷重の大きさで捉えられており、ねじる力(回転力)を表す締付トルクとは単位(チカラの掛け方)が根本的に違っています。

つまり、
トルクの単位「N・m(ニュートンメートル)」と「N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)」は、直接換算するものではなく意味が異なっているということのようです。

【ボルトを何Nで締付すると、何Nの引っ張り力が掛かるか】が簡単に換算できない以上、ボルトに降伏点が何%ととか打刻されていても全く参考にならないのではないか?
というのが文頭に記したワタシの「不思議」であります。

ボルトを締め付けすることで結果として垂直に引っ張る力が働くことは解ります。ただ、それにはネジ山のピッチだとか摩擦力の係数だとかが必要になるのではないか、とシロウトなりに考えるワケです。

ちなみに締付トルクを「軸力」と表して紹介されていた記事がありました。
(参考出典:TONE)
ボルトの軸力について
ナットを締めるとボルトが伸びて次第に締付け力が増して赤線(以下の図面)のように推移します。
①当初、軸力はナット回転角に比例して上昇します。(弾性域)
②軸力は、弾性限界に達すると回転角に対する軸力の上昇度合いは急速に低下します(塑性域)
力が抜けるポイントを降伏点といい、この点までボルトは伸びても元の長さに戻ります。
しかし、この点を超えると元の長さには戻りません。
③軸力は最大に達した後、徐々に低下し、最終ではボルトがねじ切れます(破断)


要は、
我々は上記②と③を知りたいのですが、これにはボルトの強度をベースとしてメーカー技術者が精密に設計したそれぞれの値があるワケです。
単純に、整備書(サービスマニュアル)に記載された締付トルクは10N・mだから、降伏点が80%として12.5N・mでボルトは壊れる、という単純な計算ではダメということのようです。

ですから、メーカーが持てる技術力を結集して設計した値、すなわちサービスマニュアルの値に忠実に従うことがオートバイ整備においては非常に重要であると言える所以だと考えるワケでございます。

参考出典:TONE


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