整備技術
摩擦が少ない方が良いもの
グリスの話 - オートバイの延命ポイント・その③
大切な愛車を守りたい。オーナー様の切なる願いです。
前回は『摩擦』の話をしてきました。今回は摩擦の後編、『摩擦が少ない方が良いもの』のお話を致します。
機械モノですのでアチコチがグリグリと動くわけですから、そこが擦れて減っていくサダメにあるのが機械というものです。その摩耗を少なくしないとスピードも出ず、燃費も悪く、故障ばかりする厄介者に成り下がって愛車とは呼べない存在になってしまいます。
可動部同士が接触するにはスキマが必要です。スキマが少ないと摩擦が大きいですし、スキマが多いとガタが多くなって真っ直ぐ走らない、止まらない、振動ばかり、スピードでない等、結局は機械としての性能を発揮できません。
特にエンジンのスキマ精度は100分の1ミリ単位で管理しなければならず、100分の何ミリかが減耗する迄に何万キロも走行できるなんて正に驚異的です。
これがエンジンオイルのお陰であることは間違いありませんが、オイルは液体なので、露出して回転する部分では遠心力で飛んで行ってしまいますし、ちょくちょく補充していかないと流れ出て、すぐに無くなってしまいます。
その弱点を補完するのがグリスです。オイルより流動性が少ないので、常に外部の汚泥、水、埃に晒される可動部にモッテコイなんです。
注意点としては、グリスは固形(半練り)なのが利点ですから、そこにCRCとか無造作にシューシュー噴いたらダメですよ。基本成分が似通っているためCRCがグリスを溶かして液状化させてしまうのです。そうなるとグリスは溶け出して流出し潤滑機能はなくなってしまいます。
オートバイに良く使われるグリスは、いくつかあります。
代表的なのは、モリブデングリス、シリコングリス、ラバーグリスといったところでしょうか。
グリスは使用用途を間違えると危険なこともあるんです。
以下にその詳しいところを述べていきます。
■モリブデングリス
なんか良く名前だと思った方も多いと思います。『二硫化・・・』などとスカした言い方もありますが、大切なのはソコではありません(笑)
このグリス、高温高圧下で最も威力を発揮します。そう考えてか、モリブデングリスをアチコチに塗布した場面に良く遭遇します。でもこれはあまり正しくない使い方のようです。なぜならモリブデングリスは水で流れ易いからです。
このグリスの最も得意な部位は、クランクシャフトのピンやジャーナル、コンロッドメタル等です。物凄い圧力を高熱とともに受け止めできるからですね。
メーカーで新車を組み立てるときにこのグリスを念入りに使います。ですから、新車時に良かれと思って早すぎるオイル交換をしますと、エンジンパーツが馴染む前にモリブデングリスを洗い流してしまうことにもつながります。ご注意くだされ。実にモッタイナイです。
ブレーキパッドの裏側に薄く塗布するのは、『鳴き止め』のためです。それ以外の目的はありません。なぜならブレーキキャリパは常に泥水に晒されますから可動部の摩擦低減にモリブデンは不得意なのです。
■シリコングリス
シリコングリスは、幅広い温度範囲で安定した潤滑性能を発揮し、耐水性や耐熱性にも優れています。様々な用途に使用される万能グリスです。
・ベアリング、ギア、軸受などの潤滑
・プラスチック部品やゴム部品の潤滑
・ブレーキ可動部、ケーブル、ワイヤーの潤滑
・エンジン周りの整備(ガスケットの剥離、ラジエーターホース、インシュレーターの脱着)
このグリスはゴム・樹脂への攻撃性がなく、どんな状況でもチカラを発揮する優れモノですが、お値段が高い!
これがデメリット。とはいってもクルマ以上にオートバイには良く使用されています。
■ラバーグリス
ゴム部品の潤滑や保護を目的とした特殊なグリスです。ブレーキ、ゴムパッキン、その他ゴムと金属が接触する部分などに使用され、ゴムの劣化を防ぎます。
・ブレーキキャリパーのピストンやカップ、マスターシリンダーのゴム部品の潤滑、保護。
・ゴムパッキンなど、ゴムの劣化を防ぎ、スムーズな開閉をサポート
・クラッチやブレーキのマスターシリンダー、フォークなど、ゴムと金属が接触する部分の潤滑、油漏れ防止。
・電気部品の絶縁、腐食防止、撥水効果。
ゴムへの攻撃性が極めて低いのでゴムを劣化させにくいです。
耐熱性、潤滑性:高温下でも安定した潤滑性能を発揮し、ブレーキなどの過酷な条件下でも性能を維持します。
金属部品の錆を防ぎ、水分による劣化を防ぐのはシリコングリスと共通
ポイントはシリコングリスより安価で、ゴム保護により重きを置いたグリスとなります。
(一般論としてはこうですが、実際、シリコングリスとの差別化は曖昧な部分があります)
その他、、、
■リチウムグリス
リチウムグリスはマルチパーパスグリスと言われるくらい汎用性があります。ホームセンターなどでも簡単に入手できます。
グリス選びに困ったらリチウムグリスを選んでおけば無難だと良く言われます。
が、オートバイ整備には避けた方が無難だと思います。その理由ですが、汎用性は非常に高いですが、ゴムや樹脂などに大変な悪影響を与えるからです。
また、モリブデングリスにリチウムが混ざっているものがあるのです。『モリブデングリスはサイコー!』って、ブレーキキャリパーのオーバーホールに使ってしまいますと、非常に重要なピストンシールやブーツを攻撃して破壊してしまいます。。。その症状は、
・まずゴムがビロビロになって肥大する。1.3倍くらいになる
・開くはずがない穴が開いたりする
雨風に常に晒される部位には、オイルシールやダストシールが沢山使われています。そのシールが役目を果たさなくなることで、重要なベアリングやピストンが汚水や埃に対し無防備になってしまいます。
これってオートバイの寿命に直結する事態です。
グリスの使い方にはよーく注意して、用途に合わせたものを選択してくださいね^^
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