ブレーキの中身はゴム
整備技術
V-maxレストア記 その4

ブレーキの中身はゴム

しくじりました。。。
V-maxのリアブレーキの部品を注文していなかったので、これが届くまで市場リリースできません。本来なら一週間早くラインナップできたのにー⤵

その部品はナニかと申しますと、『ピストンシール』というゴム部品です。
ディスクブレーキで、実は最も重要な役目を受け持つ部品なんです。その役目とは何か?と申しますと、
ディスクにブレーキパッドを押し付けるピストンは油圧で作動します。名前が『シール』ですから、ピストンとキャリパーボディのスキマからのオイル漏れを防ぐ役割は当然です。
200kgもあるオートバイのスピードを落とすため、ディスクにパッドを押し付けて摩擦力で減速するワケですが、その押し付ける圧力は高いはず。
1平方センチあたり20kgくらいの圧力が掛かるそうですが、自動車なんて1平方センチあたり80kgもの圧力となるそうです(しらんけど)。
そんな圧力をここでもゴムが受け止めているんです。

これだけでもスゴイことです。
ですが、これだけではありません。

そもそもブレーキレバーから手を離したとき、パッドはディスクから離れないとなりません。そうでないとブレーキ引き摺りとなって走行抵抗が巨大になってしまいます。
ブレーキ部品にバネが使われているワケでもなく、どうやってパッドは離れるのでしょう?と、考えたことございますか?
また、パッドはどんどん減っていくのにスキマが自動調整されるリクツはどうなっているんだろう?と考えられる方は素晴らしい思考力をお持ちです^^

そうなんです。
■ブレーキパッドをディスクから引き離す=突き出したピストンが元の位置まで下がる
■ディスクとパッドのスキマを一定に保ち続ける
 (対向ピストンで0.1mm、浮動式片持ピストンで0.05mm程度)
これ、ピストンシールの仕業なんですね。
ピストンが動くとそれに一瞬ピストンシールは張りついて動きます。そのときシールがネジれて変形します。そして、ゴムは変形すると元のカタチに戻ろうとする性質を持っています。
ピストンシールの変形が元のカタチに復元されようとするとき、同時にピストンを一緒に引っ張り込むのです。

DE、ピストンが動く量がグッと増えたとき(パッドが減ったとき)はどうでしょう。
ゴムは変形量が多くなり、その限界を超えると今まで張り付いていたピストンから離れます。
つまり、ゴムだけが元のカタチに戻ってしまいピストンはその場に置いて行かれてしまうワケです。ですからパッドは一定のスキマをキープしたままとなります。

スゴイ大活躍ですよね。大変な優等生です。
そのピストンシールは四角い断面のゴムリングです。実は、このゴムリングが収まるブレーキキャリパーのボディ側にも秘密があります。リング溝のカタチに工夫がありまして、ゴムの密着やシール性をコントロールしています。
ブレーキは路面に近いところにあり、泥水や土埃、砂鉄などに常に晒されています。そしてこの汚濁物がリング溝に溜まっていきます。サビや埃が堆積して厚みを増し、ゴムリングを押し上げます。そうなるとピストンへの密着圧力が増して、正しく動かなくなってしまいます。
これが『ブレーキ引き摺り』の原因です。

多くのオートバイには「浮動式」というキャリパーが使われています。これは0.05mm程度のスキマですので対向ピストン式よりブレーキ引き摺りを起こしやすいのです。

また、長期間オートバイを動かさずにいると、ゴムの変質やサビ、埃で完全に(ピストンシールが)ピストンに張り付いてしまいます。
こうなるとピストン固着、すなわち「ブレーキ固着」という現象になります。

ブレーキを復元または性能維持するため、良くキャリパーオーバーホールという言葉が用いられます。
これは単にバラバラに分解して洗ってピストンシールを交換し、再度組み付けして新しいフルードを入れるという作業ではありませぬ。
■ピストンの表面を細かいサンドペーパーでスベスベになるまで磨き、
■ピストンシール溝に溜まった強固な固着汚物をサンドペーパーやブラシでそぎ落とす
すべて手作業です。
とても根気のいる作業で手間と時間が掛かります。ゆえに費用も掛かりますが。。。
ここで手を抜くと本来のブレーキ性能を得られません。すなわち、これらをしないと『オーバーホール』と呼べないのですね。

一般的に、
整備工場における車検の見積にある『ブレーキ分解清掃』項目は、実は『ブレーキOH』ではないことに正しいご理解を頂く必要があります。なぜならこの作業ではキャリパーからピストンを抜くことをしないからです。
つまりパッドを外して洗浄し、鳴き止めグリスを塗布して元に戻す作業となります。
7~8年も車検整備だけされてきた方は、そろそろオーバーホールを検討した方が良いと思いますよ^^
何せ、相手はゴムですから...
説明内容の一部を図示したものがコレです。
ピストンリングと書かれていますが、ピストンシールと同じものです。
ローターとディスクも同義語です。。。


対向ピストンのブレーキ。
一方のピストンが固着していたため、パッドの減りに極端な差が出ていました。
おそらく数年前に固着したのでしょう。それ以降の差が画像の段差です。
制動力も相当に落ちていたはずです。(浮動式ブレーキのパッド段減りとは危険度が違います。)


V-maxのリヤブレーキキャリパーです。
対向ピストン式は整備に手間が掛かり難易度も上がります。
新品ピストンシールの到着を心待ちにしています。


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