整備技術
中古車をレストアする際に必ず確認する部位がいくつもあります。
その中で、今回はベアリングに視点を当ててみます。画像は完全に固着して動かない、いわゆる「腐ったベアリング」です。
ベアリングとは“軸受け”の意味でして、画像のボールベアリングとは“転がり軸受け”というものです。
ベアリングはたくさんの場所で使われており、回転する軸の摩擦を極限まで少なくすることで機械損耗を防止し、かつ機械効率を向上しエネルギーロスを極小化する優れものです。日本の高度な工業技術はベアリングの加工精度の高さからスタートしています。
エンジンの中にもたくさんのベアリングが使用されておりますが、この部位はエンジンオイルで常にヌルヌルに浸されているため比較的劣化が少ないです。ただし、壊れても簡単に交換できませんので大変な加工精度と耐久性が要求されています。
しかし何といっても、雨、風、埃、泥によってグリス切れのリスクに常に晒されるベアリングが最も過酷な条件にあると言えます。その代表格は車輪の軸(アクスルシャフト)に用いられるベアリングかと。
ある程度の車格になると、前輪軸には2個、後輪軸には3個ものベアリングが使われています。時速百数十キロに対応するだけの回転数と路面からの衝撃と圧力に晒されるわけですから実に過酷です。スピードが速いほど路面からの衝撃は大きくなりますので。
画像のベアリングは後輪軸のスプロケット&ダンパー近くに用いられるハブベアリング。後輪に3つある中で一番傷みやすいんです。
理由は、ドライブチェーンの真下にあるため車体の上下動でチェーンがビンビンに突っ張ったときに大きな負荷が掛かるベアリングだからです。このベアリングは完全に回らなくなっていて、残り2つでシャフトを支えていたわけです。
ですから、チェーンを張り過ぎるとこんな弊害もあることを覚えておくと良いかと思いますよ。
オーナーさんご自身で車輪を外してメンテする機会も多いのではないでしょうか。
そこで正常なベアリングの見極めの目安を記しておきますね。
■指を差し込んでグルグル回したとき、軽くスムーズに回る場合
⇒実は劣化が進みつつあります。本来は重たいホイールの慣性力で円滑に回れば良いワケで、指で軽く回るレベルはグリスが飛んで摩耗が進みつつある状態と言えます。
■指を差し込んでグルグル回したとき、スムーズに回るが少し重たいな?と感じた場合
⇒こちらが正常に使い状態です。鉄球とベアリングレースの隙間が小さく、かつ豊富なグリスによる抵抗があるとクルクルは回らないものです。
■指を差し込んでグルグル回したとき、ジャリジャリした感覚がある場合
⇒即交換をお奨めします。
■指を差し込んで上下左右にゆすったとき、なんかビミョーにガタがあるかな?どうかな?と感じた場合
⇒寿命が近づいた状態です。ほんの少しでも指で動くくらいなら重たいホイールをハメたときにはガタガタになるとお考え下さい。
要は、
重たい車輪を支える部品であることを念頭に置けば、人間の(指の)力くらいで簡単に動くのはオカシイのだ、という前提条件にて点検してみることです。
そうすれば割と診断結果は外れないと思いますよ。