整備技術
『二次エア』って良く聞きます。なんでしょう、二次って。
論理上、二次があるなら一次があるはず、ってお話なんですが『二次エア』っていう固有な空気はないんです。
実際には、『正統な空気』か『異端な空気』かの違いなんですね。つまり、本来あってはイケナイ空気のことで、オートバイの性能になんらかの悪影響を及ぼすもののことでゴザイマス。
クルマやオートバイの話で二次エアというと、大概は混合気に影響を及ぼす異端な空気のことを指すと思います。
混合気の完全燃焼に理想的な比率は空気14.7gに対してガソリン1gとなります。
チカラが欲しいときには、それよりガソリンが濃い比率になりますし、燃費を良くするステージではガソリンを極限まで薄くしたりしています。
その役割を担っているのは、インジェクションシステムやキャブレターです。
コンピュータ(エンジンECU)やキャブレターは、空気の量に応じて計量したガソリンを供給します。スロットルボディやキャブレター本体を通過した空気量が基準となっているのです。それなのに混合気の“列”に“横から割り込む”空気があったとしますと、コレハイケマセン!となるワケです。
ですから狭義の意味でいうと、エアクリーナからキャブ(スロットルボディ)の間に横入りする空気は二次エアに当たらず、キャブ(スロットルボディ)からエンジンまでの間に入り込むのを二次エアと言っています。
せっかく適正な混合気をエンジンに供給しているのに、横入りした空気で混合比率が変わってしまいエンジン回転が不調となります。(一般的には“薄く”なります。)
DE、どこから二次エアが入り込むのか?というと、エンジンとキャブ(スロットルボディ)をつなぐゴム部品が劣化して裂けたり穴が開いたりして入口を作ってしまうのですね。この部品はインシュレーターと言います。
勘の鋭い方は、『なんでゴム製なの?金属製にすれば裂けないじゃん?』って考えたりしますね。そうなんです。ゴムでないとダメな理由があるんです。
ゴムは熱の伝導率が金属より圧倒的に低いのが、この部位に用いられる理由となります。エンジン内部では常に混合気が燃えていて高温状態を続けています。その熱が金属を介してキャブ(スロットルボディ)に伝わってしまうとマズイのです。
高温な熱気を蓄えたキャブは、そこを通過する空気を膨張させてしまいます。空気密度を著しく低くします。また『パーコレーション』といってガソリンが沸いて気泡が発生してしまう現象が起きます。混ざるはずのガソリンに代わってこの気泡が混入することでガス欠状態となってしまうのです。
(VTR1000Fなどはエンジン冷却水を用いてキャブレターも冷却してたりしますΣ(・□・;))
このような悪影響を立ち切るため、エンジンの熱を燃料系統に伝えないようにゴム部品を使っています。
絶版車レストアで悩みの種になるのもこのインシュレータです。割とすぐ(真っ先に)純正品が廃番となるのがこのパーツなんですよ。
メーカー様、とても大切な部品なのは一番知っていらっしゃるでしょうから何卒供給対策をお願いしますーーー!