エンジンの健康診断をしよう
整備技術
シリンダー圧縮圧力はエンジンの健康バロメーター

エンジンの健康診断をしよう

▼ シリンダー圧縮圧力測定(単位:KPa)
※動画をご視聴の際は、音量にご注意ください。
先日、ホンダCB250RS-Zというビンテージマシンの整備をしました。
このような年季の入ったオートバイは往々にしてアチコチに調子を崩している箇所があるものです。

乗り手にとってエンジンの健康状態は特に気になるものです。エンジンの健康診断をするには、人間ドックのようなことから聴診器を胸に当てる簡単な行為まで様々です。
エンジンを分解して部品の状況を逐一チェックできればベストですが、レース仕様でもない限り一般ユーザーにはそんなことはできません。

そこで、シリンダーの圧縮圧力を計測するという作業がコスパ・タイパに優れているということを紹介したいと思います。
この計測方法ですが、
〇点火プラグを外してその穴に圧力計をネジ込むだけです。
〇あとはアクセルを全開にしてセルモーターを10秒ほど回すだけ。

これで何が判るのか?
■吸排気バルブが密着しているか、ガス漏れの有無を評価できます
■ピストンorピストンリングとシリンダーの隙間の大小が評価できます
■セルモーターや各部品が円滑に動いているか評価できます
つまり、エンジンの基本性能の適否を正確に判断できるのです。

エンジンはシリンダーの圧縮圧力が低いと、始動しないとかアイドリングしないとかパワーが全然でないとか散々メタメタな結果になります。

その圧縮圧力の値ですが、昔は「kgf/㎠ 」という単位を使って表していました。
車種にもよりますが、ガソリンエンジンでは一般的に概ね9~14kgf/㎠ の範囲が正常とされています。(ジーゼルエンジンではもっと過酷で20kgf/㎠ ぐらいの圧縮圧力が必要です)
ただ、今は「kgf/㎠ 」という単位は現在あまり使われておりません。日本では「KPa」が使用されています。ドイツでは「bar」、アメリカ・イギリスでは「PSi」です。

単位換算すると、100kPa = 1bar ≒ 0.98kgf/㎠ ≒ 14.5PSi  となるそうです。

ですから換算すると、現在の日本では圧縮圧力882~1372KPa(9~14kgf/㎠ の範囲) の範囲が正常と解されます。
※車種・エンジン毎に設定された適正値は違いますので誤解なきよう

圧縮が下がる原因としては、シリンダーやピストンの摩耗、バルブにススが噛みこんでの圧縮漏れ、バルブが欠けての圧縮漏れ等々があります。長く走れば理論的には圧縮圧力が下がる傾向にあるわけです。
一方で、メーカー設計の標準より圧縮圧力が高くなるケースもあるんです。
ある程度使用していると、ピストン表面や燃焼室にカーボンが堆積して燃焼室の容積が減り、結果として圧縮比が上がってしまうことがあります。
圧縮が強い時の方が気体の反発力も強まりエンジン出力には有益なはず。と我々一般人は考えます。
しかし、これはこれで問題であることが多いのですね。

シリンダー圧縮圧力が高すぎるとどうなるのか?
■混合気の圧縮熱が高くなり過早着火を起こす(プレイグニッションというノッキング)
■ヘッドガスケットの損傷
■オーバーヒートの原因となる
■体積カーボンが熱源となって異常燃焼を起こす(デトネーションというノッキング)
こういった深刻な事態を引き起こしてしまいます。
圧縮圧力が低すぎるとエンジンの性能を発揮できないのですが、圧縮圧力が高すぎる場合はエンジンを壊してしまうことを申し上げておきたいと思います。

今回、以前にお約束していた「ノッキングの種類」について触れておきたいと思います。

【デトネーション】
デトネーションは超音速で伝播する衝撃波のことです。衝撃波には高速な発熱反応が追従します。また、この衝撃波の伝播速度は音速(=340m/s)の数倍に達し、通常の火炎伝播速度が30m/s程度であることと比較して超高速となって、そのエネルギーは大きな破壊力を持ちます。
この異常燃焼は、過度に高い圧縮比やブースト(ターボチャージャーなどの過給圧)、指定オクタン価に満たないガソリンの使用、希薄な空燃比などが原因で発生し、重度のものはピストンが溶けるなど、エンジンに致命的損傷を与えます。

【プレイグニッション】
プレイグニッションは、点火プラグがスパークする前に混合気が自然着火する現象です。
エンジン理論ではクランクの角度がピストン上死点後(ATDC)10度で一番強い燃焼圧力となるようにプラグから火花を飛ばします。燃え始まって最高圧力に達するまで時間が掛かるので、その時間を見越したタイミングで火花を飛ばすワケです。
シリンダー温度が上がって、混合気温度が500℃以上となったり蓄積カーボンが勝手に燃えだしたりした時に発生しやすくなります。
それが「ピストン上死点後(ATDC)10度」未満、特に上死点前(BTDC)で最大燃焼圧力が生じると、ピストンを上げる力とピストンを下げる力がぶつかって巨大なエネルギーとなり、エンジンの回転を妨げるほかエンジン自体を壊してしまう原因となります。


動画は今回販売したCB250RS-Zのものです。このCBは44歳とかなりの高齢エンジンです。
バルブ擦り合わせで1200KPaまで復元したのは上出来かな~と思っています^^
自己紹介
バイクガレージDEMOTAの店主です。 バイクの話を中心に、たまにバイク以外の話も書いていきます。 すべての話に「おみや」をご用意しています。是非読んでください。
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