ブレーキピストンの素朴な疑問にお答えします
整備技術
良く見ると違うブレーキ部品の話

ブレーキピストンの素朴な疑問にお答えします

ここのところ連続でブレーキの整備が続きました。
ブレーキ鳴きの是正と、キャリパーのオーバーホールの工事でした。

というワケで今回はブレーキの話(何と安直な...)をします (◎_◎;)

当店での販売車両に「エストレヤRSカスタム」がありますが、これはエストレヤの中でも異色のクラシックスタイルでドラムブレーキ仕様です。

今まで散々「ドラムブレーキはむしろディスクブレーキより制動力はあるんですよー」と言ってきましたが、これはブレーキの摩擦材に掛かる『自己倍力作用』という働きによるものと説明させて頂きました。
しかし、
・ディスクブレーキ = 良く効く
・ドラムブレーキ = 良く効くイメージが湧かない
と考える方が非常に多いのは事実でゴザイマス (;^_^A

しかし、
現実にはディスクブレーキには“ほぼ”ない自己倍力作用が、ドラムブレーキでは強大に働くワケです。

しかし、
実際のドラムブレーキのイメージは良くない。。。
ホントは、これはブレーキの方式というよりもブレーキの「径」による影響が原因なんです。
例えばネジ回しの柄が太い方がネジを強力に締め付けられるのと同様に、ブレーキもドラムやディスクの外径が大きいほど強力になるんです。
ただ、ドラム式はホイールのハブに組みこまれる構造から、相対的に大きくしずらいので「効かない」と誤解されがちなんですわ。なので、SR400やエストレヤの様にドラム径が大きく作られたオートバイではディスク式と遜色ないレベルで制動力を確保しています。

一方、ディスクブレーキはディスクがホイールの外側についておりますので、設計自由度が高く大径化しやすいワケです。あとは、このディスクを押さえつける力が強ければ強いほど制動力が強力になっていくという寸法です。
このディスクを押さえつける部品が「パッド」となりますが、さらにこのバッドを押し込む力の源泉となるのがピストンであります。油圧ブレーキではパスカルの原理(中学理科で習ったような?)によりパッドを押すピストン面積が大きいほど圧力が高まります。

DE、よく4ポッドとか6ポッドとかの用語があります。これはこれはキャリパーにあるピストンの数を指しています。例えば、対向4ポッドとはディスクを挟んで左右に2個ずつ計4個のピストンがあるということですね。

ここからが今回の核心です。
何故、ピストンが沢山使われるのでしょう?

この答えは比較的簡単です。
ピストン加圧面積の合計値が大きくなる(制動力を上げる)ためですね。

では、何故にピストンを大径化して一つにまとめないのでしょう?その方がコストが掛からないのに?
という問題はいかに。

この答えも比較的簡単です。
ピストンを大径化し過ぎるとキャリパーも大き過ぎて取り付けが厳しく、そして重たくなるからです。
もっと言えば、小さいピストンを複数配置した方が同じ圧力でもディスクの“より”外側を押さえ付けることができるからです。先ほどのネジ回しのお話と同じで出来るだけディスクの外側を押さえた方が制動力が高くなるという寸法です。

では最後にもっとも難しい問題です。
ピストンを良く見ると、その径に大小の違いがある場合があります。これは何故でしょう?
大きいピストンと小さいピストンが使われていることがあります。異径ピストンの採用理由は?という視点ですね。


お分かりですかね?

答えは先ほどお話したドラムブレーキにヒントがあります。


そう「自己倍力作用」です。ディスクブレーキでは「自己倍力作用はほぼない」と書きましたが、裏返すと「少しある」んです。
自己倍力作用というのは回転物の回転方向に摩擦材が巻き込まれることで圧着力が増すことを言います。ですからパッドも下側(地面に近い方)にディスクに巻き込まれる力が働くワケです。
すると下側は強い制動力が働き、上側のピストンはそれより弱い力でディスクを押し付けることになります。
そうするとどうなるか。
パッドの上と下で圧力差が発生してしまうんです。これがパッドの偏摩耗やブレーキ鳴きとなって悪影響を及ぼします。もちろん制動力にも影響します。
そうならないよう、自己倍力作用が働く側は押し付けの弱い小さいピストン(パスカルの原理)を用いて圧力の均衡を図っているというのが“答え”です。

ですから、ブレーキ鳴きがする、という症状。
これはパッドの端を削ってもカッパーグリスを塗布しても収まらないことがあります。これ実はピストンの動きが悪くピストン圧力が均一ではないことが原因かもしれないという場合もあります。
ご注意くだされ (◎_◎;)

まあ、アレですな。
異径ピストンでも1ポッドピストンでもピストンの動きが悪いモノはダメですわ。
小手先のグリスアップなどで改善できるシロモノではござんせん (◎_◎;)
ちなみに、ワタシはブレーキを分解したら3種類のグリスを使っています。

そしてブレーキの重整備は「特定整備」と言いまして指定工場・認証工場で許される整備項目なんす。

「まだイケる」は「もうイケん」と考える方がよろしかろうと存じます ('◇')ゞ
限界まで減ってたパッドですが、その減り方は“均一”で理想的です ('◇')ゞ
(汚れた手ですんまそん)


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