昨今の整備士事情

（人相の関係上、公害とならぬよう目隠しをしていますw）

昨日、整備士の国家資格試験が日本全国で実施されておりました。
この試験は科目別に毎年1回（10月）ないし年2回（10月と3月）実施されております。
ですから、ふと今日びの整備士事情についてお話してみようかと思いました。

いろいろなルートで整備士免許を得ることができるのですが、とにかく時間またはお金、もしくはその両方が掛かります。
それゆえ、高等学校を卒業してそのまま専門学校に進学すれば一番スムーズなんですが、そう上手くいかないのが世の中ツライところでゴザイマス。

一般的に自動車やオートバイを利用する年齢層は非常に幅広いワケです。一方で、20歳で学校を卒業した整備士さんは年齢的に最下層となるのです。ワタシのような濃い～いヲヤジを多々相手する若者の心労は計り知れません。生命と財産がリアルに掛かっているのですから顧客も超真剣ですし。
絶対にインチキなことをノタマッてはなりませんし、かといって真っ当な正論だけで人生百戦錬磨のヲヤジさん達を「納得」させるのは非常に困難です。
そう、説得ではなく「納得」が必要なのでありますから。
これには、正論を引き立てる膨大な周辺知識や経験値、高度なコミュニケーション能力が必要です。顧客はこれらを20歳台の若者に容赦なく求めます。
当然ですね、とても高価な買い物ですから (◎_◎;)
整備士を若くして辞めてしまう者が沢山いるのは別に不思議なことではありませぬ。

次に、自動車もオートバイも高精度な電子制御によって動いている時代になりました。電気と半導体が主流の世界です。
非常に高度で複雑な仕組みでありまして、車体に故障診断機まで搭載しています。
ところが、その故障診断の内容を書き出すのに外部接続の読み取り機器が必要です。
DE、これが各メーカーの秘伝のタレといったところでありまして、その特殊な装置やノウハウはメーカー特約店（正規ディーラー）しか配給しないワケです。そうして、近代的なクルマは何かあると我々のような町工場では設備不足で取り扱いが出来ず正規ディーラーに集中します。
そうなりますと正規ディーラーの仕事量と緊張感はモリモリ倍増しちゃっているワケです。若い方の正規ディーラーへの就職を望む傾向は強いですから、その大波をモロに被って心身が疲弊して離職率が上がっている、又は先見の明で整備士を希望しない方が激増するという寸法であります。

3つ目に、新車の利益は非常に薄いという事実であります。正規ディーラーでは建物や内装もブランドアイデンティティを維持すべく、非常に高額な固定費になります。薄い利益で高額な固定費を賄う方法として業務効率の改善が必要です。
人件費に手を付けて退職されては本末転倒で整備士不足が加速してしまいます。その解決策として、ワタシの時代では考えられなかったような週休二日制度を各ディーラーでは導入しています。
これは一見良いコトです。
が、工場の稼働時間そのものが制約されるのですから、顧客の要望を満たすには嵐のような作業の効率化・スピードアップが会社からドンドン要求されていきます。
一般的に修理作業では易々と作業が進むことが少ないです。この条件下で「早く仕上げろ」というのは、無理筋による心身の疲弊か手抜作業かという話になる理屈です。

こうした基本ダイナミクスですから、顧客も会社も整備士も三者三様に困っているワケです。
数を増やすために整備士を粗製乱造しては顧客や会社はたまったモノではありません。
■若い方がゆとりをもって学べ楽しく仕事ができるやり方の仕組みづくり、
■経験豊富なオトナが人生途中からでも容易に整備士を目指せる仕組みづくり
これらを両建てで実施することかと。
それが、整備士不足の解決策としては何より大切かと思う今日この頃です。

蛇足ですが...
オートバイの本来性能を引き出す整備ができたとき。
これは、感性の鈍りつつあるヲヤジの私でも突出したリビドーを感じるんですよね^^