今主流の電子制御とはナニ?
整備技術
スクーター修理での原因探索と仮説

今主流の電子制御とはナニ?

先日、50ccスクーターの修理を外注として依頼されました。
走っていたら急に止まってしまったとのこと。
間接的にですが状況をお聞きしたところ、23区内から秋川に釣りをするために走ってきたとのこと。
何ですと!あのオソロシイ都内の交通事情をくぐり抜けて60キロぐらい原付一種でやってこられたと。オーナー様は秋川まで来て突然動かなくなったスクーターを友人の自動車修理工場に預けて電車で帰宅されました。
まずその熱意と努力と気合に敬意を払いたいと思います。都内の幹線道路を40km/h以下で走り続けることがどれだけ怖いことか... DEさんはようしまへん。

とても頑張っているスクーター君を何とか復旧したいと思って現車を拝見しました。
が、インジェクション車ということが判明。インジェクション車は故障しにくいけど、故障したら修理がタイヘンです。なんせ電子部品が相手ですから。電気は目に見えないので現象と論理で故障個所を絞り込んでいく必要があります。
最近のインジェクション車両にはダイアグノーシス(故障診断装置)が付いております。しかし、これは、故障個所をピンポイントで特定してくれるものではないのです。“〇〇系統の異常”を教えてくれるだけのヒントみたいなものです。

エンジン回転の3要素というものがあります。『良い混合気』『良い圧縮』『良い火花』です。
『良い混合気』の守備範囲はスロットルボディ、インジェクター、センサー
『良い圧縮』の守備範囲はシリンダー、ピストン、バルブ
『良い火花』の守備範囲はスパークプラグ、イグナイター、各コイル
などに大別できます。『良い圧縮』以外はすべて電装品となります。

まず予備知識からですが、センサーとアクチュエータの違いです。現場で何が起きているかの情報を拾うのがセンサー、その対策として現場で実際に改善処置を施す役割を担っているのがアクチュエータとなります。
例えば、センサーで感知した「アイドリングが低い」という信号をコンピュータに入れると、コンピュータはその情報を運算し、その演算後の信号をオートチョーク(またはISCV)というアクチュエータに伝えて、アイドル回転数を上げるワケです。
ですから、電子制御車では、センサー異常、アクチュエータ異常、コンピュータ異常を論理的に追っかけていく必要があってカナリ大変です。

以下はエンジン回転の電子制御フローです。
■バキュームセンサーや温度センサー等で吸入空気の密度や量を計量し、クランク角センサーでエンジン回転数を計測します。それら複数の情報からコンピュータは判断し、インジェクターというアクチュエータにガソリン噴射を指示します。
■ガソリン噴射のタイミングはクランク角センサーとカム角センサーで検知し、ピストンが圧縮上死点前〇〇度に達したときを狙ってコンピュータがインジェクターを駆動します。その後の火花を飛ばすタイミングをクランク角センサーとカム角センサーを使って決めるのもコンピュータです。この点火タイミングを早めることを“進角”、遅らせることを“遅角”といいます。
エンジン回転が高くなると進角、エンジン負荷が高いときは遅角、ノッキング発生時は遅角、とコンピュータ制御もしています。
■そしてガソリンが燃焼した後の排気ガスの含有酸素量データをO2センサーで検知し、信号をコンピュータに入れます。その不完全燃焼の度合いをコンピュータが演算し、インジェクター(アクチュエータ)に噴射量の調整信号を入れる
とまあ、こういうサイクルを回すことになっています。

どうです?
かなり複雑でしょう??
故障診断装置が、故障部品は “コレだーーー!” ってドンピシャに教えてくれれば良いのですが、実際は “うーーーん、この辺かなーーー?まあ遠くないところで^^頑張れーー” というイメージで教えてくださいます。クルマのような超複雑な電装品の塊なら大いに参考になりますが、スクーターのようなコスト優先の半機械・半電制の製品は、結局は人間が考えてアプローチするしかないと考えるDEさんであります。

メーカーさんも、一度故障した電装品(特に電子制御系)は電気が目に見えない分だけ確証が持てないのか、アッセンブリー交換対策となってその周辺を丸っと交換してしまう対処が主流となっています。それで修理が高額なものになってしまう傾向があるとお考え頂くと存外、外れてはいないと思います。

画像はスクーターのコンピュータです。“ECU”といいます。Electronic Control Unit(エレクトロニックコントロールユニット)の略です。
自動車などでは、エンジンECU、トランスミッションECU、ブレーキECU、メーターECU、エアコンECUなど何個も搭載されています。車両のあらゆる機能を制御するために、この各ECUをCAN通信で繋いでお互いに情報交換しながらクルマを走らせています。このCAN通信のツイストペアケーブルは断線したり傷ついたら全て新品交換です。流れるのがあまりに微細なでデータ信号なので、断線箇所をつないだところで再起動しないのです...
ETCのケーブルもほぼ同様です。長さ調整のため切って繋ぐのは機器が起動しないリスクが超高い行為でゴザイマス。ご注意を^^

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