整備技術
「クラッチがすべっているかも」という会話をたまに耳にします。
たしかにクラッチが損耗するとスベるというのは理屈では解ります。しかし、実際にスベッているかどうかの判定は結構難しいものです。
と、言いますのもクラッチすべり現象は一般道ではほとんど出現しません。
(もちろんクラッチ摩擦材がベロベロに摩耗していた場合等は別です。)
すべりが発生するコンディションはオートバイが「高負荷状態」にあることが前提だからです。
理解しておくと便利な言葉として「負荷が高い」「負荷が低い」という用語があります。
■高負荷=負荷が高い:アクセルが開いているのにエンジン回転数が低く、回転が上がらない状態
■低負荷=負荷が低い:アクセルが閉じ気味でもエンジン回転数が高い状態
すなわち高負荷とは、高速道路を高いギヤのままで加速走行するとか、上り坂を高いギヤのままで登っていくような状況を言います。
※反対に、下り坂や高速道路での定速巡行は「負荷が低い」ということです。
クラッチ前(クランクシャフト)とクラッチ直後(クラッチシャフト)それぞれに異なった大きな回転力が掛かったとき、それらをつなぐクラッチに負担が集中し、その締結力の限界を超えたときに「すべり」が発生します。
クラッチすべりを確かめる際の条件としては、
①“ある程度高いエンジン回転” のとき、
②“トップギヤ=直結状態” で定速巡行、
③ ②の状態から更に “アクセルをガバッと開ける”
ことです。
そのときエンジン回転数が瞬時に上がって、反対に車速にダイレクトな変化が現れないとき、初めて「クラッチがすべってる」との疑いになるワケでございます。
尚、2速や3速でアクセルをガバッと開けても、オートバイがドカンと飛び出して危ないだけですので絶対にお止めくださいね。