キャブレタージェットの守備範囲
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キャブレタージェットの守備範囲

昨年末に初めてご連絡頂いたお客様と最近ようやくお会いできました。
20年以上を共にしているオートバイが調子を崩していて安心して乗っていられない、とのことです。

実際に拝見すると、大排気量オフ車 (◎_◎;) しかも逆輸入車。
排気量もデカいが車格もデカい。。。しかも鞍が高すぎて、チビ太の私は足つき性が悪い、いやいやいや「足つき性がない」というトホホな現実でありました。

「信号待ちでエンストする。再始動ができなくなる。プラグを新品の交換すると再始動したりする。」
「数面前に発電機周りを全面的に修理した。今は火花は飛んでいる。ただし、バッテリーレス車で火花の飛びが弱い車種と言われている」
「ある程度エンジンを回すと“ブブブブ”となって回転が上がらなくなる」

瞬間的にワタシ「あー、これは燃調が濃すぎるな」と感じました。

キャブレターの話は散々してきたような感はありますが、今日も(笑)それになります。。。
しかーし、初めて話すネタだらけの逸品回になりますように。

まず押さえておきたいのは
キャブレターは極低速回転から超高回転まで連続で回らないとなりません。そうです。公道を走る乗り物ですからドライバーの臨機な要求に対して瞬時に応答できないとマズいからですね。
良くメインジェットとかスロージェットとか言われていますが、これはキャブレターの内部にある構成部品を指しています。

エンジンの運転をわざと文章にしていきます。
スタータバルブが開いて濃い燃料が少量吐出されてまずエンジンが始動します。始動するとアクセル全閉でのパイロットスクリューの仕事で、パイロットポートから燃料が吐出されてアイドリングしています。アクセルをチョイ開けしますとパイロットスクリュー+スロージェットの仕事でエンジンは回転します。さらにアクセルを開けますと、スロージェット+ニードルジェットの仕事となります。アクセル半開くらいから先になるとニードルジェット+メインジェットの仕事です。更にアクセルを開けて開度3/4くらいから先はメインジェットの仕事になるという寸法です。

良く分かりませんよね(笑)

ここでご理解頂きたいのは “+” という記号です。キャブレター内部にある“各”部品が互いに依存しながら守備範囲の役割を果たします。そして絶え間なく連続でバトンを渡し続けている、ということなのです。
そう、これがエンジン回転をリニアに変化させられる理由なんですね。

【キャブ構成部品の守備範囲】
■極低速はパイロットスクリュー
■低速域はスロージェット
■中速域はニードルジェット
■高速域はメインジェット
これらをあらゆる回転域で上下の部品間同士の連携で絶妙なバランスを取りながら依存しあってそのエンジン回転を作り上げるワケです。

このバランス取り(コントロール)を機械的にやってしまうという。スゴイ技ですね~

着目は “+” と書きましたが、具体を申し上げるとメインジェットを変えるとニードルジェットの燃料計量値も変わります。するとスロージェットの守備範囲である低速域にもニードルジェットは関与しますので、この低速域にもメインジェット変更の影響が及ぶということです。
反対も然りで、スロージェットを入れ替えると、極低速域から中速域まで影響を及ぼす可能性があるということでもあります。

どれか一つを入れ替えるとバランスがグチャグチャになる可能性もあるということです。といって、エンジントラブルを解決するのに手掛かりも掴めないのでは悲惨であります。
ですから、
DEさんとしては大概、最初に「極低速⇔低速域」、次に「低速⇔中速域」、更に「高速域」、最後に「中速⇔高速域」と切り分けて追い込んで詰めていっています。
つまり、
①フロート室油面、パイロットスクリュー、スロージェットを三つ巴できめる
②メインジェットをきめる
③ニードルジェットのストレート長、テーパ角、クリップ段数をきめる
 (ニードルの番手は通常いじりませんのでクリップ段数調整がメインです。)

ここで大切なのはセッティングの基準。つまりはノーマルの状態のことです。「メーカー設計値」は偉大です。これがないと“砂浜でダイヤを探す”作業になりますので。
ちなみに、レース活動をされている方々はこれを実施しているのです。本当に尊敬いたします (◎_◎;)


DE、今回の場合は、、、早速発見しました。
オーナー様が当店に乗り付けてきた状態のオートバイでは、
■パイロットスクリューでの燃調が破綻していました。
 何と!パイロットスクリューのユニットが誤って組立てられていました。しかも重要部品がない...
■メインジェットに馬鹿デカい番手のものを使用...
■エアカットバルブのダイヤフラム弁に間違ったパーツが使われている可能性が高い...

まず、パイロットスクリューの話です。
おそらくここで80%は改善すると思われます。現車ではスロージェットがノーマルから著しく低い番手のものが使われていました。しかもパイロットスクリューの戻し回転数もノーマルの半分以下の状態でした。油面の高さはほぼ正常値でした。
→これは誤組みされたパイロットスクリューのせいで燃料がノーコントロールで最大値まで吐出された。
 (先端のニードルも変形していて更にノーコン状態を加速中...)
→パイロットスクリューを思い切って締め込んだ(燃料の吐出を減らす作業)
 ※結果、調整がまるで無効。
→スロージェットの番手を下げて燃料の吐出量を大幅に減らした
というロジックが浮かんできました。

その組立て間違いというのがトップ画像となります。
数十円のワッシャを失くし、数十円のOリングの取付位置を間違えた、ただこれだけでオートバイそのものがマトモに動かなくなったワケだと考えております。

次にメインジェットのオーバーサイズ使用についてのお話。
このオートバイはヨーロッパに一度輸出されたものを日本に逆輸入したものであることが調査の結果で判明しております。
ヨーロッパ仕様では、輸出先の法規制や気温、湿度などを総合的に考慮して、一般的に日本国内仕様よりかなり燃調を薄くしています。これが嫌(たぶん、高速域での息つきやパワー不足を感じたのかと)でメインジェットを弄ったのでしょう。しかし、極端過ぎました...
しかも、この過激なセッティングは中速域にも悪影響を与えている可能性があります。適正と考えるメインジェット番手の候補を2つ(多くて3つ)まで絞って、あとは最後に比較して決める手順となります。
※ここまでの過大なサイズだとまず仮説理論値まで番手を落としてから低速域の調整を行います (◎_◎;)

最後はエアカットバルブのお話
エアカットバルブというのは「アフターファイヤ」を減らす装置です。走行中のアクセル全閉でエンジンブレーキを使用したときにマフラーから出る“パンッ、パンパン”といった破裂音のことです。
アフターファイヤは燃調が薄いときに比較的多く発生します。一部の混合気はシリンダー内で燃焼せずそのまま排出されていきます。その生ガスが排気管の温度で発火してしまったときの破裂音です。
エアカットバルブはエンジン高回転で強いエンジンブレーキが掛かるような状況になったとき、キャブレターを通過する空気の量を一時的に少しカットします。
そうなると空気と燃料の比率が変わり瞬間的に燃調が濃くなります。燃調が濃い方が比較的アフターファイヤの発生が少ないと先ほど申しました。この状態を瞬間だけエアカットバルブが作り出すのです。

(画像参照)
DE、現車ではバルブハウジング(内部)が白サビだらけ。。。こんなの見たことない!レベル (◎_◎;)
この現象を読み解くことが大切です。なぜこんな状態になったのかしら?と。
部品をよーく観察してみます。
■中身の部品は比較的新しいような。。。
■バルブがハマる孔(アナ)の方が明らかにバルブ自体より大きい...
そう、バルブ自体は正しく動いてはいるものの、バルブとして全く機能していない (◎_◎;)というのがワタシの結論です。(このバルブの不全は結果として低速域の燃調に影響を及ぼす可能性がありそうです。無視はできません。。。)
同じ車種用のパーツでも年式や輸出先で仕様が違うことは当たり前にあり得ます。たぶん全く違う仕様の部品を、形状に疑いを持つことなく組付けたのでしょう。
その結果、バルブが“抑止弁”ではなくなりました。バルブが上下動する度に空気がハウジングまで侵入し、その気中の湿気がアルミボディを腐食させたものだとの仮説を立てました。
しかし、悪いことにこの部品を入手しようにも既に廃番となっています (-_-;)
中古品も見つかりません。
苦肉の策として。。。旧車で違う車種の、それもアフターマーケット部品で「適合しそう...」というものを注文中です。これでダメならエアカットバルブの装置自体を強制カット(無効化)するしかありませぬ。


どうなりますかは次回以降にご紹介ということで (;^_^A
一つ言えますことは、
「キャブは四つの系統がリレーしています。それを理解しない燃料調整はただ迷子になりますぞ」ということであります (;^_^A

ちなみにオーナー様が購入時の状態に対して自分で手を入れたことはないとのことでした。オーナー様の名誉の為に申し上げます ('◇')ゞ
・ニードルが右に曲がり、先端部は更に左に折れています。
・Oリングの下にスプリングが見えています。しかもOリングゴムがくっついて動かない (◎_◎;)


白サビはアルミに湧きます。
真っ白なサビの粉だらけでした。。。


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