整備技術
こんなのアリか...
カムシャフトが焼き付いてる!?
エストレヤカフェレーサー風の外観がほぼ出来上がったところで、エンジン始動!
掛からない...
キャブレターのオーパホールはしたはず。火花も飛んでる。
掛からない。。。
エンジンの三要素は「良い混合気、良い圧縮、良い火花」。シリンダー圧縮圧力は1300KPaくらいあってもおかしくないはずが、実測すると300KPaしかありません。
セルはキュルキュルと良く回るし、こんなはずないんだがな?と思いプラグホールを指で塞いでクランキングすると、、、圧縮と同じくらいの「負圧」を感じます。
プラグホールで大きな負圧(空気の吸い込み)を感じるのはおかしい。ピストンが下がると空気を吸い込むため多少の負圧を感じるのは普通ですが、それにしても何かおかしい。。。
ピストンに縦キズが入っているか、ピストンリングがダメになったか、はたまたバルブがカーボン噛みして密閉しないか。そのどれか又は複数かな?と先の疑問を抱きつつも一応そう考え、腰上オーバーホールすることにしました。まあ、整備士なら普通に考えることですので(-_-;)
分解を進めて、カムシャフトを駆動するカムギヤをインパクトレンチで外そうとしたところ、んっ?ボルトがユルユルじゃん??
もうワケワカメ状態です。普通、このボルトはレンチで左回しするしか緩まないはずなんですが。
なぜなら、カムギヤ又はカムシャフトのどちらかから凸ピン(爪)が出ていて、カムシャフトとギヤを♂♀連結しているのが一般的ですから。
良く良く調べますと、エストレヤの場合はカムギヤに凸ピンがあるのですが、これがない。一方でカムシャフトに凹穴があるはずだか見当たらない。いえ、凹穴はあるのですが、何か金属が詰まっている...
しかもカムシャフトはピクリとも回転しません。
そうです。カムギヤのピンが折れて破断し、カムシャフトの穴に残っていたのでした。。。
『カムシャフトが固着して全く回転しない』という状態でセルモーターを回したため、ピンが破断したと考えられます。
そしてボルトは左回転で緩むところ、カムギヤは左回りに回転するため、ボルトも釣られて左回転の力が働きユルユルになっていったものと結論づけました。その後、ギヤだけが空回りしていたワケです。
カムシャフトは圧縮上死点の位置(吸排気バルブの両方が閉じる位置)で固着しているようです。そしてピストンだけが上下していたようです。それでピストンが下がるとプラグホールを塞いだ指に負圧を感じるといった現象が生じていました。
そう、圧縮上死点で吸排気バルブが閉じたままの状態でピストンを上下させても圧縮圧力が上がるはずがありませんね。シリンダーには新気が入ってこないのですから。
通常は素手でスポッと抜けるカムシャフトが、重量3kgのスレッジハンマーで尻を叩いてもビクともしません。おそらく焼き付いているのかと(-_-;)
一方でシリンダーとピストンはパット見で傷一つないキレイな状態でした(後ほど摩耗を計測してみないと正常かどうか判断できませんが)
何かでヘッドの組み付けを誤ったか、カムシャフトにオイルを送るデリバリーパイプ(油路)が詰まって焼き付いたか。
こーなりゃ不幸はできるだけ楽しめ!ということで、
スペアのシリンダーヘッド(中古)を購入したので、焼き付いた方のヘッドを思い切り叩いてカムシャフトを外してみたいと思います。
コワいもの見たさで、どんな状態か非常に楽しみですね^^


凸ピンの折れたカムギヤ

ヘッドの穴からカムシャフトは見えるが全く動かない...
ヘッドから抜けもしない...